寄附をする

今昔の歴史と文化 暮らしが織りなす、国内随一の近世港町「鞆の浦」

Language

【第1回/シンボルプロジェクト】伝統的建造物を未来に伝えていくために

2021.09.01
実施中 町並み交流拠点

「潮待ちの港」として栄え、時代とともに独自の発展を遂げた鞆の浦。町には、江戸から明治、大正、昭和にかけて建設された伝統的建造物が軒を連ね、港町ならではの風情を醸し出しています。先人から受け継がれてきた鞆の歴史的町並みを大切に守ることはもちろん、魅力ある地域づくりに生かしながら未来に伝えてくため、伝統的建造物(旧松本家住宅)を活用した「(仮称)鞆町町並み保存拠点施設」の整備が行われています。20227月にオープンを予定しているこの施設に込められた想いや整備に至るまでの経緯を、工事の進捗や建物の歴史などとあわせてご紹介していきます。

整備前(旧松本家住宅)

完成予想図

鞆らしい町家の風情を残す旧松本家住宅。

山が海に迫り、平地に乏しい土地柄から町家が密集する都市を形成してきた鞆町。特に鞆城跡と鞆港の間のエリアでは、間口が一間半から二間程度(一間は約1.81m)の敷地が多く、密度の高い町並みが形成されています。

今回、施設整備により新たな命が吹き込まれる旧松本家住宅は、建築年代は明治前期と推定されますが、柱や梁などには江戸時代中期の木材が使用されていることが分かっています。

昭和20年代に箒(ほうき)屋が営まれていました。間口は三間半という鞆では比較的大規模の町家で、二階建て、切妻造平入、本瓦葺。一階正面の通りに面した部分には、蔀帳(ぶちょう)が二具現存しています。蔀帳とは、2枚の板戸を上下に開閉する仕組みです。鞆では明治頃まで大部分の町家と長屋の床上部に蔀帳が使われていましたが、現存しているのは町内でもわずかで,とても貴重な存在です。旧松本家住宅の蔀帳には、ネコなどの侵入を防ぐため下方に低い格子が設置されています。かつての港町の暮らしが、まるですぐそこに存在しているかのように感じられませんか?

旧松本家住宅の蔀帳

地域住民の想いを受け動き始めた施設整備。

きっかけは200712月、町並み保存には拠点が欠かせないとの思いから「旧松本家住宅を拠点として整備してほしい」と、地域住民が福山市に要望書を提出したことでした。鞆の活性化がひいては福山市の発展にもつながることから,2011年度に福山市が土地を購入(建物は寄付)。20162月に開催された「鞆まちづくりビジョン策定に向けたワークショップ」の中で、地域住民が拠点施設に求められる機能について意見を出し合いました。その意見をもとに、まちづくり推進委員会、町内会連絡協議会、まちなみ保存会の代表者とともに基本設計が取りまとめられたのです。

鞆まちづくりビジョン策定に向けたワークショップ

歴史と文化を伝え、にぎわいを生むまちづくりの拠点。

地域住民が中心となって町並み保存の推進や地域活性化に取り組み、地域住民や来訪者の集い場としてにぎわいの創出を図り、そして鞆地区の活性化に向けたまちづくりの拠点となることを目的とする(仮称)鞆町町並み保存拠点施設。鞆の町並み保存や歴史的な景観の保全に関する取り組みの一つとして、「鞆・一口町方衆」応援プロジェクトの寄附金が整備費用の一部に充当されています。

施設の東側に位置する旧松本家住宅については復原的な修理を行い、鞆の伝統的建造物としての公開を行うほか、施設の西側や敷地の奥には鞆の町並みに配慮した建物を建設し、町並みの保存・継承に関する相談窓口、歴史や文化、日本遺産の紹介スペース、地域住民や観光客が交流できる多目的スペース、休憩や飲食ができるスペース、トイレや調乳室などが整備されます。

イメージパース(鳥瞰)

施設整備には、高い技術力を誇る職人や専門家が結集。鞆町における伝統的建造物の修理・修繕のモデルケースとするために、歴史的建築物の特徴を伝える意匠やデザインを出来る限り保存・復原するように、2022年のオープンを目指して作業が進められています。次回は、整備中の現地の様子をお届けします。

旧松本家住宅の工事風景

<整備場所>

◯問い合わせ先

福山市経済環境局 文化観光振興部 文化振興課(TEL084-928-1278