令和元年度実施 伝統的建造物等の修理・修景
建築された時期 | 江戸時代 |
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内容 | 屋根葺替・一部補修,外壁補修 |
藤田 盟児先生(建築史家、工学博士)のコメント
○修理を監督したのが広島県のヘリテージマネージャーの行政講座を修了している福山の地元の建築士の方で,歴史的な建物の良さを大事にしたい建築士さんが監修したので,大変上手に,適切に修理された事例である。
○この建物の修理の一番の眼目は,軒先に丸瓦が並んでいて,それは全て古いものを使用している点にある。
人の目につく軒先の瓦については,今後割れて雨水が入ることがあっても室内に影響しないので,そういうところに古い瓦を使用して修理をしており,道を歩いている人から見れば昔の雰囲気がそのまま再現されている。
○傷んだ腰壁板を張り替えているが,まだ使えそうな板は引き続き使用することで,歴史を経ている雰囲気が伝わるよう修理が施されている。
○景観を守るというのは年月も守るということであり,構造上,雨漏り等の痛みにおいて問題のないものはもう一度使うということが忠実に守られている。
建築された時期 | 江戸時代 |
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内容 | 屋根葺替,外壁漆喰塗替・杉板張替,建具取替,戸袋復元 |
藤田 盟児先生(建築史家、工学博士)のコメント
○重伝建発足当時から地域の想定する時代の実例を調べて,古くて価値のあるデザインは,きちんと同じデザインにする工夫が随所に感じられる。
格子が残っていなかった1階の窓は鞆の浦のまちの中にある戦前までの実例を調べて,同じデザインで作るということが守られている。
○戦後出てきた材料はなるべく使わないこととしており,時代の統一感を壊さないよう,樋は塩ビ製ではなく,銅製を使用しているので,年月の経過とともに錆びて青銅となり,全体の見た感じが大正時代の建物と変わらないように見えてくるだろう。
建築された時期 | 大正時代 |
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内容 | 屋根葺替,外壁漆喰塗替,建具取替 |
藤田 盟児先生(建築史家、工学博士)のコメント
○歴史的な建物を使った宿泊施設として改装したいとのことで,ホテルが買い取って改修を行ったものである。
○2階の窓は鞆の浦によくあるタイプの格子を使用している。
○1階は全面開けられるようにしており,道に対して解放されている分,この施設の雰囲気が非常に感じられる。
○2階の窓の両サイドの小さな格子窓を残しており,この形こそが鞆の浦の伝統的なまち屋である,
○瓦が全て新しい瓦であり,古い瓦も使用できればよかった。
建築された時期 | 昭和戦前 |
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内容 | 屋根葺替,外壁修理,建具修理・取替,雨樋取替,根継ぎ・補強等 |
藤田 盟児先生(建築史家、工学博士)のコメント
○この建物の2階手すりの幾何学的なデザインはから1900年代前半の建物であること分かるし,手すり横の格子もまた同じデザインに丁寧に復元しながら修理を行ってくれたので,雰囲気が非常に残っている。
○1階は光を入れたいということで格子戸にしており,これは居住用建物であるということを意味している。
京都ではこういう風に1階に格子戸や格子窓を付けた家のことを仕舞屋(しもたや)といい,お店を辞めて,住居に作り変えたという建物のことを指します。
こういった建物の性格が分かれば,昔の景観を楽しむ・知る・観光するという一つのコンテンツになってくるのではないか。
建築された時期 | 明治~大正 |
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内容 | 屋根葺替,雨樋取替 |
藤田 盟児先生(建築史家、工学博士)のコメント
○一見古そうに見えるが,調べると戦後に作られた建物であることが分かったことから,基本的に傷んだところのみの修理にとどめている。
○無理に古い時代の建物に戻すわけではなく,戻せない理由があるのであって,それが歴史的景観を害さないでのあれば,そのときのままでの形態の修理ができるという事例である。
○建物前の車道部分が舗装されたことによって,以前のアスファルト道路よりも建物全体が柔らかい雰囲気になった。
建築された時期 | 明治時代 |
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内容 | 西面外壁の土壁部分修理 |
藤田 盟児先生(建築史家、工学博士)のコメント
○はがれた部分のみ漆喰を塗り直したものである。しかも部分のみでの漆喰だけ塗り替えているので目立たないし,伝統的な建造物の良いところは,部分修理がきくことである。
建築された時期 | 明治時代 |
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内容 | 床組等の防蟻処理,土壌薬剤散布処理 |
建築された時期 | 江戸時代 |
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内容 | 床組等の防蟻処理,土壌薬剤散布処理 |
藤田 盟児先生(建築史家、工学博士)のコメント
○海辺の地域なので,どうしても床下等を中心にシロアリが発生することから,伝統的建造物を守るためにシロアリ駆除は重要なものになっている。
○「これだけシロアリが入ってますよ」と言ってシロアリ駆除代として莫大な金額を居住者に請求する業者もいるので,居住者の不安を取り除くということにもつながる。