【第2回/シンボルプロジェクト】建物が持つかつての面影と歴史的価値を再現
鞆の歴史的町並みを守り、魅力ある地域づくりに生かしながら未来に伝えていくため、現在、伝統的建造物(旧松本家住宅)を活用した「(仮称)鞆町町並み保存拠点施設」の整備が行われています。
2022年7月にオープンを予定しているこの施設は、歴史や文化、日本遺産の紹介スペース、地域住民や観光客が交流できる多目的スペース、休憩や飲食ができるスペース、トイレや調乳室などを整備。さらに、町並み保存のための修理・修景に関する相談窓口としての役割を果たすとともに、建物自体の資料的価値を活かし、修理の実例としてご覧頂き、技術者を育成する場でもあります。
そのため、建物の随所に伝統的な技法が用いられていることを実感できるよう復原作業が進められています。
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慎重な調査から見えてきた建物のストーリー。
長年空き家だったこともあり、建物はかなりのダメージを受けていました。慎重に解体作業を進めるとともに、細部まで調査が行われ、設計士や現場担当者など関係者が集い復原方法について何度も協議が重ねられました。調査において明らかになったことの一つが、柱が一定の長さで継がれていること。鞆町内の別の建物でも同様の位置で柱が継がれていることから、明治前期に建築された当時、海上輸送されていた規格品を利用して建築されたものと推測されます。建築物から、当時の交易の様子も見えてきます。
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梁や柱には、松のほか、栂(つが)を使用。現在では、希少で大変高価な材料となっていますが、伝統的な建築物には栂で建てられた建物が多く残っています。
また、基礎には鞆城の石垣の一部だったと思われる石が使用されており、古い材料も無駄なく再利用する習慣があったことが分かります。
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現在では希少な栂
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基礎の石は、かつての鞆城の石垣!?
伝統的建築物修繕のプロフェッショナルが集結。
解体された木材は、元の組み方や痕跡が分かるよう丁寧に部材ごとに番号を振り、記録を残しながら、可能な限り当初の木材を残しながら繕いを施し、再び建物として再生されるのを待ちます。
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部材ごとに番号で振り分け
解体してみて初めて分かることや新たな発見も多く、臨機応変な対応が重要です。今回も、一面壁だと思われていた土壁の中から窓枠が出現。在りし日の姿に近づけるため、その都度設計を変更しながら作業が進められています。経年劣化により傷みが激しい木材もありますが、できる限り古材を活かすため、熟練の職人が幾多の工程を経て再度使えるように修理していきます。
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新旧の木材を使った継手
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古材でも中は綺麗なまま
傷んだ木材を修繕しながら元通りに組み直す作業には、高度な技術が必要とされます。今回の修復作業には、伝統的建築物の修繕を専門とする大工や左官といった職人たちが集結。専門的な技術を持つ職人の数は時代とともに減っているため、「(仮称)鞆町町並み保存拠点施設」の整備は、伝統工法の技術を伝承し技術者を育成する場としても重要な取組なのです。
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◯問い合わせ先
福山市経済環境局 文化観光振興部 文化振興課(TEL:084-928-1278)