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今昔の歴史と文化 暮らしが織りなす、国内随一の近世港町「鞆の浦」

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神戸芸術工科大学教授、東京大学名誉教授

西村 幸夫

福岡県福岡市出身

プロフィール

1952年生まれ。

神戸芸術工科大学教授。
東京大学名誉教授。

日本イコモス国内委員会委員長、国際遺跡記念物会議(ICOMOS)副会長、文化庁参与、文化庁文化審議会委員、同世界遺産特別委員会委員長、国土交通省国土審議会委員などを歴任。日本ならびにアジアの歴史都市の保全計画立案にかかわる。


近著に『都市から学んだ10のこと』(学芸出版社、2019年)、『県都物語』(有斐閣、2018年)、『西村幸夫 文化・観光論ノート』(鹿島出版会、2018年)、『まちを想う 西村幸夫講演・対談集』(鹿島出版会、2018年)など。
編著に『まちを読み解く』(朝倉書店、2017年)など。

鞆の浦再生の物語を応援することは、過去からの付託を受けたわたしたちができる大切な貢献です。

長い間の意見の相違を乗り越えて、いままさに鞆の浦の山側トンネル計画が動き出し、港町の歴史的環境を保全しながら、同時に生活環境の改善をおこなうということの両立が可能となりつつあります。

これまでの長い世代が受け継いできた鞆の浦の風景をわたしたちの世代で絶やすことなく、より住みよさを増しながら、次の世代に受け渡すことができるとすると、わたしたちの世代の責任を果たすこともできたといえるのではないでしょうか。

こうした壮大な実験にわたしたちの世代の叡智を集めて、成功することができるとすると、これは後世に誇れるおおきな物語となります。鞆の浦再生の物語を完成させるためにも、ひろくわたしたちの世代のひとりひとりが鞆の浦を応援することが必要です。

今から40年ほど前、小樽運河をめぐって保存と開発の問題が抜き差しならなくなった際、道路計画の変更によって、運河沿いが魅力的な観光地としてよみがえったという物語をわたしたちは知っています。鞆の浦は、小樽運河からのバトンを受け継ぎ、新しい都市再生の物語をひろくわたしたちに語りかけてくれるのです。

鞆の浦の再生を応援することこそが、わたしたちの世代ができる未来への貢献なのです。