今昔の歴史と文化 暮らしが織りなす、国内随一の近世港町「鞆の浦」

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文化庁長官

宮田 亮平

新潟県佐渡市

プロフィール

金工作家。

新潟県佐渡に蝋型鋳金作家の2代目宮田藍堂の3男として生まれる。

1972年に東京藝術大学大学院 美術研究科 工芸専門課程(鍛金専攻)を修了。

イルカをモチーフとした「シュプリンゲン」シリーズなどの作品で、「宮田亮平展」をはじめとして、国内外で多数の展覧会に参加。「日展」内閣総理大臣賞や,「日本現代工芸美術展」内閣総理大臣賞など数々の賞を受賞し、2012年に日本芸術院賞を受賞。

東京藝術大学教授・学部長を経て、2005年より同大学学長として2期10年に渡り大学経営を務めた後、2016年4月より文化庁長官に就任。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会「東京2020エンブレム委員会」委員長も務めた。

“保命酒”も“景観”も“鯛の浜焼き”もある鞆。
そこで何かしてやろうという、
その第一歩に「鞆・一口町方衆」を。

 私は、佐渡島の出身で、家の裏が海なんです。常に潮騒を聴きながら育った人間だったので。それで、僕は燈籠に対してものすごく印象が深いんですよ。たまたま鞆にも素晴らしい燈籠がありまして、あれほど立派ではないですが佐渡島にも岬の先に燈籠がありまして。古くてたぶん江戸時代からのものですが、相川金山、私のすぐそばの町なのですが、金山のところの広場に燈籠があって、その燈籠に塔火を灯して“佐渡おけさ”を踊る。で、町の人たちや外から来た人達も呼び込んで一緒になってこの“佐渡おけさ”を踊るんですよ。これがまた実にいいなあと。その辺のところの関係で言った時に、鞆って、ああそうか、燈籠を一つのメインにしているなと。同じ共通なものがあったなと。

 話が飛びますが、海っていわゆる「水」。僕ら人間っていうのは水がなくては生きていけないという時に、水との関わり。それが鞆の場合は階段が水の中にあって、上には燈籠がある。あの印象は忘れられないですね。水がなぜ恵みのものであり大事なものであるかっていうのを、もうちょっと鞆の人達にアピールしてもらえると。

 この間、鞆に行ってね。一緒に行ってくれた人に宮城道雄の銅像はここだねって言ったら、知らないんだよ。誰でも「春の海」は知っている。正月に「春の海」のことを聞かないっていうやつはいないと思うよ。宮城道雄は東京音楽学校の教授でしたから。私、東京美術学校の出身なんで、やはり宮城道雄といえば日本の邦楽史で「なくてはならない人」。でも、鞆がルーツだってことを知ってる人いる?ちゃんとパンフレットにはあるのよ。だけどね、銅像には「宮城道雄像」としか書いてないんですよ。

 日本人自身が、海が好きだったり、水が好きだったりというのは、結局そこから出た特産物に塩があるわけですから、必ず醸造、醸成の文化がしっかりしている訳ですよ。そういう意味でも、鞆は海と港とともに発展した町。で、保命酒。保命酒も資料館の方にご案内頂いたんだけど、いやー、素晴らしいですね。16くらいいろんな生薬が。なんや、「心が喜べ」と言っていると。

 それから古い家がいっぱい良いのがあるんだけど、1軒は面白いのがありしまたね。新しく作って、1泊3万とか4万とかね。そういうリニューアルとリノベーション。それから重ね技。これが鞆にはいっぱいあるわけだから。

 海外から来た人たちに対するおもてなしの説明文は、もっとQRコード使った方がいい。ほとんどスマホ持ってない人いないでしょう。この「鞆・一口町方衆」の寄附金は、まずはQRコードに。そうすれば人が来る。人が来れば楽しくさせるためには景観を考える。景観を考えれば腹が減る。腹減ったら、鞆で何食うかって言ったら鯛。どうして“鯛の浜焼き”売らないの?

 “保命酒”も“景観”も“鯛の浜焼き”もあるんですよ。けどね、それを積極的に自分からやって、空き屋になった家を買ってリノベーションして、そこでまた何かしてやろうという、そういう「よし」を、その第一歩にこの「鞆・一口町方衆」というのを持っていかないともったいないよね。
そのためのある程度の資金提供みたいなものが必要なんですよ。倉敷(蔵の町)と竹原(塩の町)のちょうど隙間にあって、そこをもうちょっと、「商人の町」に持っていけるといいですよね。

 この「鞆・一口町方衆」いいですね。記念カードがステンレスで作ってある。僕も金属の人間なんでね、よくぞステンレスでやったな、たいしたもんだと。そして、一口が二口に、十口になるとこれが金色になるとかね。そういう段階的な面白さを作っていってあげると、とても面白いと思います。